映画と映像とテクストと

映画や読んだ本などの感想を書きます。ビデオゲームについてはこちら→http://turqu-videogame.hatenablog.com/

2020-01-01から1年間の記事一覧

『ベニスに死す』を観た

1971年。ルキノ・ヴィスコンティ監督。凄かった。高校生の頃に見たときには、「おお、なかなか面白い映画じゃないか」なんて気取ってハスに構えていたが、この年になって見てみると、もう刺さりまくるのなんの。 通俗的な陰キャの初老の芸術家。もう、この歳…

『グラン・プリ』を観た

1966年。ジョン・フランケンハイマー監督。『フォードVSフェラーリ』を観て以来、いつか見ようと思っていた『グラン・プリ』を観た。面白かった。部分的には、大袈裟すぎるとかベタすぎるような感じもあるのだが、レースシーンの見応えと、説明しすぎないや…

『東京オリンピック』を観た

1965年(昭和40年)。市川崑総監督。素晴らしい作品だった。2020年7月23日。本当だったら、2020年の東京オリンピックが開催されるかもしれなかったこの時期に、1964年の東京オリンピックの映画を見るのは楽しい体験だった。あらゆるスポーツを憎み、オリンピ…

『サイコ』を観た

1960年。アルフレッド・ヒッチコック監督。すべてが緻密で面白い。なぜ1人目の女性は殺されねばならなかったのか。殺される女性の行為や言動をあそこまで見せることの偏執さが面白い。横領も恋人との逢瀬も社長との関係も、すべてが殺人の前に消え去ってしま…

『ヱヴァンゲリヲン 新劇場版:Q』を観た

2012年。庵野秀明総監督。新劇場版の中で、今のところ一番分かりやすい作品が『Q』だと思う。意味不明の置いてけぼり、という雰囲気ではあるのだけど、いい大人になった製作者がエヴァを改めて今描くために当たり前のことをやっているのが『Q』だと思う。201…

『モダン ・タイムス』を観た

1936年。チャールズ・チャップリン監督。やはり苦手なチャップリン。デモ行進にいつの間にか紛れて、大人数をチャップリンが率いることになってしまうあのシーンは本当に凄いと思った。結局チャップリン自身が政治的な主張をするわけではないし、市井の人の…

『ヱヴァンゲリヲン 新劇場版:破』を観た。

2009年。庵野秀明総監督。『破』はすべてがどうでもいいような感じに思える。今のところ、三作の中で一番退屈に感じる。 三体同時攻撃も、エヴァの使徒による乗っ取られも、シンジの離脱からの復帰も、すべてがどうでもいい。ただ、司令室を突き破って使徒を…

『エヴァンゲリオン 新劇場版 : 序』を観た

2007年。庵野秀明総監督。ビル群がにょきにょき生える絵の面白さ。『序』はヤシマ作戦という鉄板の展開もあり、とても楽しい。昔見た時よりも、エヴァのキャラクター達の語る世界観にも、キャラ造形にも、台詞にも、全く思い入れが生まれず、心底どうでもい…

『機動警察パトレイバー 2 the Movie』を観た

1993年。押井守監督。やはりパート2の方が好きだ。パート2の高慢な感じというか、状況説明で色々と乗り切ろうとするような感じが多分好きなんだと思う。描かれる思想や信条の内容というのは比較的どうでもよく、全ての言葉が視覚的でもあるような気がする。…

『翔んで埼玉』を観た

2019年。武内英樹監督。意外に面白かった。ギャグとしてやる悪ノリもそんなに嫌な感じがしなかった。結構真面目さが作品に通底していて、それを感じ取ったからかもしれない。 終盤で加藤諒が「馬鹿にされるのが嫌だったのに、薄ら笑いを浮かべてなんでもない…

『チャップリンの黄金狂時代』を観た。

1925年。チャールズ・チャップリン監督。雪山の山荘の絵といい、室内の絵といい、実に素敵。しかし僕はどうもチャップリンの映画が苦手だ。なぜなのかよく分からないが、尻の座りの悪さを感じてしまう。 チャップリンのあの顔がとにかく苦手。とても立派な人…

『さらば、わが愛/覇王別姫』を観た

1993年。陳凱歌(チェン・カイコー〕監督。とにかくテンポがいい。印象的なエピソードがポンポンポンと立て続けに展開していく。歴史物語としても、恋愛劇としても、人間ドラマとしても、とにかくよくできていて面白い。 中国政府の描き方も、そんなに良い風…

『時をかける少女』を観た。

1983年。大林宣彦監督。尾道は確かに絵になる。ただ、何がこの映画の魅力であるのか、最後までよく分からなかった。SFとしての物語は、普通に楽しめるもので、なるほどと思うわけだが、これが映画として何を見せたいのか分からなかった。自分には大林宣彦が…

『太陽がいっぱい』を観た

1960年。ルネ・クレマン監督。主人公のアラン・ドロンが一体何を考えているのか。そこに精神というか、主体というか、そういうものを感じ取れないところがあって、その不気味さが面白い。アラン・ドロンが虐められる場面でも、彼が殺人を犯す場面でも、彼が…

『ミッドサマー ディレクターズカット版』を観た

2020年。アリ・アスター監督。うーん。なんというか、世代、なんだろうか。一つ下の世代の、うまく腹落ちしない感覚。歳を取ったのかな。前作『ヘレディタリー』は、そうしたモヤモヤを感じつつも「まだ、面白い」と思えたけれど、本作には強い反発心を覚え…

『ブラックパンサー』を観た

2018年。ライアン・カイル・クーグラー監督。テレビ放映の吹替での鑑賞。うーん、面白くなかった。というか、何が描きたいのか分からなかった。自分が黒人文化というものへの理解が低すぎるからかもしれない。最近見たつまらなかったアメコミ映画というと『…

『アウトレイジ 最終章』を観た

2017年。北野武監督。あまり良い評判を聞かなかった3作目。確かに前2作に比べると、ちょっと展開が強引で、武演じる大友の無鉄砲さがある意味最もコミカルだったと言えるかもしれない。 しかし、それでも自分は面白い作品だったと思う。大友と彼が身を寄せる…

『影の軍隊』を観た

1969年。ジャン=ピエール・メルヴィル監督。レジスタンスを描く映画であり、その生き様や振る舞いの冷酷さが光る作品。そしてその過酷な生き様を強いたナチスや戦争というものの悲惨さが、画面の奥の方から響いてくる。作品の面白さはさることながら、リノ…

『うる星やつら2 ビューティフルドリーマー』を観た

1984年。押井守監督。最初見たときは、前半の「永遠に続く学園祭前日」というモチーフが魅力的すぎて、後半の夢邪鬼との戦いとかあまり印象に残っていなかった。しかし今回は落ち着いてその後半部分を改めて楽しむことができた。 ラムちゃんが諸星あたるにと…

『カプリコン・1』を観た

1977年。ピーター・ハイアムズ監督。リアリティに難があったり、ご都合主義的な展開があったりと、様々な難点はあるものの、楽しく2時間が過ごせてしまう。結局、黒幕というのは一体誰だったのか、あまりよく分からない脚本なのだけど、出てくる政治家たちの…

『笑の大学(舞台版)』を観た

1998年(パルコ再演)。三谷幸喜作。何度見ても楽しくて、笑って、泣きそうになる。三谷節の詰め合わせ。一つ一つのギャグがそこまで面白いわけではなくて、そのセリフが発せられる状況と当事者意識を共有するが故に、笑いが滲み出てしまうという感じがする…

『栄光のル・マン』を観た

1971年。リー・H・カツィン監督。『フォードVSフェラーリ』が大変気に入ったので、参考作品としてこの作品を見た。同じルマンを舞台にしているが、今作はポルシェ対フェラーリ。主人公のスティーブ・マックィーンはガルフカラーのポルシェ917に乗る。ルマン…

『ヘレディタリー / 継承』を観た

2018年。アリ・アスター監督。あのガブリエル・バーンが、もう老年期に差し掛かる男を演じていることに最初、衝撃を受けてしまった。なんだか切なくなる。 前半部分の事故のシーンがとても良かったが、後半は比較的普通の悪魔ムービーという感じがして、ちょ…

『母なる証明』を観た

2009年。ポン・ジュノ監督。いやぁ、これも面白いな。ポン・ジュノ作品は、人の行動の複雑さではなく、その単純さや底の浅さを意地が悪いくらいに炙りだすような手つきで描く。それは同情とかを許さない、言い訳の入る余地がないほどのあけすけな人間らしさ…

『フォードvsフェラーリ』を観た

2020年。ジェームズ・マンゴールド監督。とても面白かった。ある種の古臭さがとても気持ちの良い映画だ。ケンの妻の存在などは、その典型的な要素だろう。フォードとフェラーリの戦いは、何を象徴しているのか?というのは、この映画を批評する上での最もプ…

『シン・ゴジラ』を観た

2016年。庵野秀明総監督。見れば見るほど、大したことない映画だなぁと思うんだけど、それでもやっぱり楽しく観てしまう。この映画は、2011年3月11日の最も心地いいドキュメンタリーを見るような楽しさがある。 庵野秀明はとにかくエンタメ体質の人であり、…

『殺人の追憶』を観た

2003年。ポン・ジュノ監督。とにかくいちいち面白い。話が巧みに展開するのでも、見事なセリフがあるわけでもないんだけど、とにかく魅せる。映画としての品質が高くて飽きない時間を過ごせる。 ポン・ジュノ監督は、なぜこんなにも魅力的な画を撮ることがで…

『ほえる犬は噛まない』を観た

2000年。ポン・ジュノ監督。ポン・ジュノ監督はとても分かりやすい映画を撮るけれど、とてもインテリなんだろうな、分かってやってんだろうなということを常に感じさせる。本作は、そういう意味で、とてもポン監督のインテリっぽさが分かりやすく出ている映…

『巴里の屋根の下』を観た。

1930年。ルネ・クレール監督。ああ、映像が切ないというのは、こういうことを言うんだなと思った。歌声が消えていくラストシーン、煙突の見える様々な家の屋根と空。人間のいたたまれないほどの小ささと、その掛け替えのなさ。1930年というトーキーとサイレ…

『ドーン・オブ・ザ・デッド(ディレクターズカット版)』を観た

2004年。ザック・スナイダー監督。かの名作『ゾンビ』(1978年)のリメイクを作るというのは、なかなかどうして勇気のいることだろう。ショッピングモールという舞台設定だけが同じで、あとは全く異なる作品になったが、素晴らしいゾンビ映画であると思う。 …