映画と映像とテクストと

映画や読んだ本などの感想を書きます。ビデオゲームについてはこちら→http://turqu-videogame.hatenablog.com/

映画

『サイコ』を観た

1960年。アルフレッド・ヒッチコック監督。すべてが緻密で面白い。なぜ1人目の女性は殺されねばならなかったのか。殺される女性の行為や言動をあそこまで見せることの偏執さが面白い。横領も恋人との逢瀬も社長との関係も、すべてが殺人の前に消え去ってしま…

『ヱヴァンゲリヲン 新劇場版:Q』を観た

2012年。庵野秀明総監督。新劇場版の中で、今のところ一番分かりやすい作品が『Q』だと思う。意味不明の置いてけぼり、という雰囲気ではあるのだけど、いい大人になった製作者がエヴァを改めて今描くために当たり前のことをやっているのが『Q』だと思う。201…

『モダン ・タイムス』を観た

1936年。チャールズ・チャップリン監督。やはり苦手なチャップリン。デモ行進にいつの間にか紛れて、大人数をチャップリンが率いることになってしまうあのシーンは本当に凄いと思った。結局チャップリン自身が政治的な主張をするわけではないし、市井の人の…

『ヱヴァンゲリヲン 新劇場版:破』を観た。

2009年。庵野秀明総監督。『破』はすべてがどうでもいいような感じに思える。今のところ、三作の中で一番退屈に感じる。 三体同時攻撃も、エヴァの使徒による乗っ取られも、シンジの離脱からの復帰も、すべてがどうでもいい。ただ、司令室を突き破って使徒を…

『エヴァンゲリオン 新劇場版 : 序』を観た

2007年。庵野秀明総監督。ビル群がにょきにょき生える絵の面白さ。『序』はヤシマ作戦という鉄板の展開もあり、とても楽しい。昔見た時よりも、エヴァのキャラクター達の語る世界観にも、キャラ造形にも、台詞にも、全く思い入れが生まれず、心底どうでもい…

『機動警察パトレイバー 2 the Movie』を観た

1993年。押井守監督。やはりパート2の方が好きだ。パート2の高慢な感じというか、状況説明で色々と乗り切ろうとするような感じが多分好きなんだと思う。描かれる思想や信条の内容というのは比較的どうでもよく、全ての言葉が視覚的でもあるような気がする。…

『翔んで埼玉』を観た

2019年。武内英樹監督。意外に面白かった。ギャグとしてやる悪ノリもそんなに嫌な感じがしなかった。結構真面目さが作品に通底していて、それを感じ取ったからかもしれない。 終盤で加藤諒が「馬鹿にされるのが嫌だったのに、薄ら笑いを浮かべてなんでもない…

『チャップリンの黄金狂時代』を観た。

1925年。チャールズ・チャップリン監督。雪山の山荘の絵といい、室内の絵といい、実に素敵。しかし僕はどうもチャップリンの映画が苦手だ。なぜなのかよく分からないが、尻の座りの悪さを感じてしまう。 チャップリンのあの顔がとにかく苦手。とても立派な人…

『さらば、わが愛/覇王別姫』を観た

1993年。陳凱歌(チェン・カイコー〕監督。とにかくテンポがいい。印象的なエピソードがポンポンポンと立て続けに展開していく。歴史物語としても、恋愛劇としても、人間ドラマとしても、とにかくよくできていて面白い。 中国政府の描き方も、そんなに良い風…

『時をかける少女』を観た。

1983年。大林宣彦監督。尾道は確かに絵になる。ただ、何がこの映画の魅力であるのか、最後までよく分からなかった。SFとしての物語は、普通に楽しめるもので、なるほどと思うわけだが、これが映画として何を見せたいのか分からなかった。自分には大林宣彦が…

『太陽がいっぱい』を観た

1960年。ルネ・クレマン監督。主人公のアラン・ドロンが一体何を考えているのか。そこに精神というか、主体というか、そういうものを感じ取れないところがあって、その不気味さが面白い。アラン・ドロンが虐められる場面でも、彼が殺人を犯す場面でも、彼が…

『ミッドサマー ディレクターズカット版』を観た

2020年。アリ・アスター監督。うーん。なんというか、世代、なんだろうか。一つ下の世代の、うまく腹落ちしない感覚。歳を取ったのかな。前作『ヘレディタリー』は、そうしたモヤモヤを感じつつも「まだ、面白い」と思えたけれど、本作には強い反発心を覚え…

『ブラックパンサー』を観た

2018年。ライアン・カイル・クーグラー監督。テレビ放映の吹替での鑑賞。うーん、面白くなかった。というか、何が描きたいのか分からなかった。自分が黒人文化というものへの理解が低すぎるからかもしれない。最近見たつまらなかったアメコミ映画というと『…

『アウトレイジ 最終章』を観た

2017年。北野武監督。あまり良い評判を聞かなかった3作目。確かに前2作に比べると、ちょっと展開が強引で、武演じる大友の無鉄砲さがある意味最もコミカルだったと言えるかもしれない。 しかし、それでも自分は面白い作品だったと思う。大友と彼が身を寄せる…

『影の軍隊』を観た

1969年。ジャン=ピエール・メルヴィル監督。レジスタンスを描く映画であり、その生き様や振る舞いの冷酷さが光る作品。そしてその過酷な生き様を強いたナチスや戦争というものの悲惨さが、画面の奥の方から響いてくる。作品の面白さはさることながら、リノ…

『巴里の屋根の下』を観た。

1930年。ルネ・クレール監督。ああ、映像が切ないというのは、こういうことを言うんだなと思った。歌声が消えていくラストシーン、煙突の見える様々な家の屋根と空。人間のいたたまれないほどの小ささと、その掛け替えのなさ。1930年というトーキーとサイレ…

『ドーン・オブ・ザ・デッド(ディレクターズカット版)』を観た

2004年。ザック・スナイダー監督。かの名作『ゾンビ』(1978年)のリメイクを作るというのは、なかなかどうして勇気のいることだろう。ショッピングモールという舞台設定だけが同じで、あとは全く異なる作品になったが、素晴らしいゾンビ映画であると思う。 …

『パラサイト 半地下の家族』を観た

2020年。ポン・ジュノ監督。素晴らしかった。面白かった。同監督の他作品では『グエムル』しか観ていなかったし、『グエムル』もそこまでおもろかった印象はなかったので、本作は期待以上に楽しかった。 展開の面白さとテンポの良さなど、作劇に対する評価は…

『グエムル 〜漢江の怪物〜』を観た。

2006年。ポン・ジュノ監督。比較的淡々と物語が進み、そこまで面白い映画ではなかったけれど、時折ハッとするような美しい絵が出てきてドキッとする。特にラストシーンは素晴らしかった。 物語の序盤から怪物の姿全体を画面に晒すところなどはJ.J.エイブラム…

『墓石と決闘』を観た

1967年。ジョン・スタージェス監督。『OK牧場の決闘』よりもずっと面白かった。ワイアットによる復讐で、どんどんと賞金対象が殺されていき、逮捕できないので、賞金も貰えないという状況になっていくのが、とてもおかしい。協力する奴らみんなが、その事で…

『OK牧場の決闘』を観た

1957年。ジョン・スタージェス監督。つまらなくはない映画だと思うんだけど、なんかあんまり面白くないというか、今ひとつどいつもカッコよくない印象で、どこか散漫としたイメージの映画。 唯一、ドク・ホリデイが、ちょっと味のあるキャラクターのようにも…

『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』を観た

2019年。片渕須直監督。素晴らしい作品だとは思うんだけど、前作の方が良かったなぁと思ってしまった。前作観賞後に原作を読んだときは、随分と思い切って重要エピソードを削ったなと思ったけど、本作(さらにいくつもの)を見たあとだと、余計に前作の翻案…

『終電車』を観た。

1980年。フランソワ・トリュフォー監督。最初に見たときは大学生の頃、だったと思う。その時も面白かったー、と思ったが、今回もまたやっぱり面白いなと思った。また一段と味わい深くなっている気もする。 最高のNTR物語。トリュフォーはその手のテーマが多…

『天国と地獄』を観た

1963年。黒澤明監督。いやぁ、面白い。時折「え?そうなの?」と思うようなところもあるけれど、エンターテインメントとして面白いから許せてしまう。簾越しに見える刑事の眼差しや、誘拐犯のサングラス顔が花に囲まれた中にニュッと出てくるとところなど、…

『キング・コング』を観た

2005年。ピーター・ジャクソン監督。ピーター・ジャクソンえらいなーと思った。『キングコング: 髑髏島の巨神』(2017年)に比べると50倍くらい面白い。サスペンスとしてもちゃんとしてるし、お話の展開はかなり強引でどうかなってところもあるんだけど、そ…

『ビリー・ザ・キッド 21才の生涯 特別版』を観た

1973年。サム・ペキンパー監督。既にペキンパーの死後ではあるが、2005年に監督の意思を尊重して再編集されたというバージョン。いやぁ、良かった。サム・ペキンパーの西部劇は、出てくる登場人物の意図が全然読めない行動を取るのが本当に面白い。ずっと黙…

『劇場版 天元突破グレンラガン 紅蓮篇・螺巌篇』を観た。

2008年、2009年。今石洋之監督。なんだかんだ言って面白かった。理屈とかそういうものを超える気合の勝利というコンセプトなわけで、理屈が足りていないことに不満を持つのはおかしいという話はあると思うのだけど、やはりもう少し展開を駆動するための仕掛…

『ウォッチメン (アルティメット・カット版)』を観た

2009年。ザック・スナイダー監督。213分という長さ。しかし面白い。やはり最高だわ。原作もまあもちろん面白いんだけど、映画版は現代的にちゃんとアップデートされていると思う。「共通の敵を作る事で米ソが仲良くなる」というラストの企みも、原作が当時(…

『男はつらいよ フーテンの寅(3作目)』を観た

1970年。森崎東監督。さくらの登場シーンは少ないけれど、どのシーンのさくらも涙をさそう。柴又から立ち去ろうとする寅さんに「もともとはお兄ちゃんの縁談だったんだもんね。良いお嫁さんに出会えるかもって思ったんだよね」と優しく声をかける。そしてラ…

『スターウォーズ / スカイウォーカーの夜明け』を観た

2019年。J.J.エイブラムス監督。いやいや面白かった。前作のエピソード8が良かっただけに、不安なJ.Jの再登板であったが、良かったと思った。 本作にはとても現代的なためらいを感じて、そこがとても良かった。血統を中心としたスターウォーズサーガに明確な…